こんにちは、基板復旧サービス担当の佐藤です。
今回ご紹介するのは使用中に不具合を起こし起動しなくなったiPhoneSEです。
中のデータを何としても救出してほしいとのご用命をいただきましたので、
早速本体の状態から確認して参りましょう。
スリープボタンを押しても起動せず、ライトニングケーブルを繋いでも
全く電流が流れないので、基板のどこかに不具合が起きている可能性があります。
こちらは基板を取り出した状態。
まずは基板だけを導通(どうつう)確認していきます。
電流を流さない状態で、バッテリーコネクターの端子1本1本がきちんと繋がっているか調査を進めます。
バッテリーVCC側の導通、端子間の抵抗値も正常値ですので、問題は無さそうです。
更に外部電源を接続して、今度は通電状態を確認して行きます。
紛らわしいですが、導通と通電は同じことをしているわけではなく、
電流を流すか流さないかの大きな違いがあります。
話を戻しまして、この時の電流値が約10アンペア程流れてましたので、
VCC_MAIN側先の回路で何やらトラブルが起きていることがわかりました。
先ほど繋いだ外部電源をはずし、VCC_MAINラインの抵抗値を確認すると、案の定ショート状態となっておりました。
不具合個所があらかた絞り込み出来ましたので、該当箇所を顕微鏡目視していきます。
今回の症例ではどの部品が不具合を起こしているかの判別が難しい状況でしたので、
いくつかのブロックに分けて、順番にチェックを行う戦略をとります。
すると、とある1個のチップコンデンサーが原因である可能性が浮上しました。
本来流れなければならない電気をこの部品で遮断していたようです。
不具合を起こしていたチップ部品を外し、電源ラインの導通を確認します。
問題が解決しましたが、念のため近くにある他のチップも確認しておきます。
確認したライン全てのチップが正常でしたので、再度外部電源を接続し、リーク電流を確認します。
当初の症状確認時点では、約10アンペア流れてましたが、今はきちんとゼロアンペアになりましたので、
閉回路的にはクリアーされたことになります
一旦、パネルだけを取り付けて起動を確認してみます。
スリープボタンを押してみると
起動時も電流の流れるタイミングが有りますので、起動時の電流の変化を監視し、無事パス入力画面に。
タッチ動作の確認と、バッテリーの充電動作も確認しておきます。
ひと通りチェックが終わり、組み戻し作業を行います。
回路調査で外したシールド板も元に戻し
基板を筐体に収めてから最終テストの実施です。
ここでも不具合なく、無事起動する事が出来ました。
今回不具合を起こしていたチップ部品を大きさが判るようホームボタンの横に並べてみました。
こんな小さな部品一つの故障でも、起動不良に繋がってしまうあたり
iPhoneはとても精密な機器であることが伺えますね。